近年、コールセンター業務をアウトソーシングする企業が増加しています。 一般社団法人日本コールセンター協会が発表した「2020年度 コールセンター企業 実態調査」によれば、テレマーケティング・エージェンシー(コールセンター運営代行会社)の売上高・従業員数ともに右肩上がり。 コールセンターの利用ニーズ拡大に伴う人手不足や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、在宅コールセンターを導入する企業も増えてきました。 テレワーク・リモートワーク下で働く在宅コールセンターには数多くのメリットがある一方、課題も存在します。 それが、「応対品質」「労務管理」「セキュリティ対策」です。 この記事では、在宅コールセンターの3大課題の解決方法などについて詳しく解説していきます。
在宅コールセンター導入企業は増加傾向
冒頭でもご紹介の一般社団法人日本コールセンター協会の調査結果によれば、在宅テレコミュニケーターを採用している企業は28%で、2019年度よりも11社増加しました。 また、「採用の予定がない」という企業も2019年度より19社減少し、38%の19社に。
さらに、2019年度と比較可能な32社の回答を見てみると、在宅テレコミュニケーター採用への考え方が変化してきていることがわかります。
2020年度に在宅テレコミュニケーターを採用した企業は、その理由について「新型コロナウイルス感染症の影響」と回答。 これらの調査結果からは、コールセンターの多くがコロナ禍、そしてさらに、コロナ後を見据えた対策をおこなっているということがわかります。 【関連記事】 コロナ後のコールセンター機能の考え方や変化について詳しく解説
在宅コールセンターを導入しない理由「セキュリティ上の問題」
上記の調査で、在宅コールセンターを導入しない理由として最も多かったのが「セキュリティ上の問題(15社・30%)」です。 セキュリティ対策の問題は在宅コールセンターに限ったことではなく、テレワーク・リモートワークをおこなうすべての企業の課題でもあります。 情報資産を守るために厳しいセキュリティポリシーを設定している企業の場合、セキュリティ上の課題は大きな懸念であるといえるでしょう。
インバウンド年間コール数は倍以上に
セキュリティ上の問題を始めとしたさまざまな問題から思うように導入の進まない在宅コールセンターですが、年間コール数は増加しています。 アウトバウンド年間コール数は7,850,500コールから8,743,500コールに。インバウンド年間コール数にいたっては21,831,000コー ルから55,845,000コールと、倍以上に増えているのです。 コロナ禍という特殊な環境下で、増加するコール数に対応するためにも、在宅コールセンターやクラウドシステムなどを活用した人手不足解消を考える必要性が生じているといえるでしょう。
在宅コールセンターの3大課題と解決方法
上図の「在宅テレコミュニケーターの採用予定がない理由」からもわかる通り、在宅コールセンターの3大課題と言われているのが、下記の3つです。
応対品質
労務管理
セキュリティ対策
ここからは、それぞれの課題や、その解決策について詳しくご紹介します。
応対品質
オペレーターがそれぞれの自宅など離れた場所で勤務する在宅コールセンターは、管理者がトラブル発生に気付きにくく、適切なタイミングでのアドバイスができないことから応対品質が低下してしまう可能性があります。
応対品質低下を防ぐためには、下記のような対策が有効です。
シートマップ機能(座席表)
音声データ文字起こし(音声テキスト化)サービス
シートマップ機能(座席表)とは、パソコンの中に座席表を作成し、画面上で全オペレーターの状態を一括管理できるシステムのことです。
緊急時にはシートマップ上で管理者に合図を送るボタンがついているため、トラブル発生時の対応もスムーズにおこなえます。
また、通話録音データをテキスト化できる「音声データ文字起こし(音声テキスト化)サービス」も、応対品質向上につながる機能です。
これまでは通話記録一つ一つをすべてチェックしたうえで分析・改善点の指導をおこなわなければなりませんでしたが、テキスト化すれば見るだけで内容の把握、そして適切な指導ができるようになります。
そのほかにもコンプライアンス管理の業務負担軽減、クレーム対応効率化、オペレーターの応対スキル向上など、さまざまなメリットを得ることが可能です。
【関連記事】
コールセンターの音声データ文字起こしサービスとは?特長や解決可能な課題
労務管理
労務管理の難しさも、在宅コールセンターの課題の一つです。
在宅オペレーターの評価の判断が難しい
新たに在宅オペレーターを採用する場合、遠隔での教育方法が決まっていない
在宅オペレーターの悩みやモチベーションの低下に気付きにくい
在宅オペレーターの勤務状況を把握できない
このような課題は「評価制度・教育制度の再設計」「定期的なミーティングの実施」「マニュアル動画・ビデオ会議システムによる新人教育」が解決策となるでしょう。 また、シートマップ機能は労務管理にも活用できます。 画面上の座席表を見れば、管理者は在宅オペレーターもオフィスで仕事をするオペレーターも、まるで同じ場所にいるかのように全体の状況を監視可能。離れた場所でもマネジメントができます。 【関連記事】 コールセンターのシートマップ(座席表)とは?活用法を解説
セキュリティ対策
在宅コールセンター導入で最も大きな懸念となっているのが、セキュリティ上の問題です。
自社コールセンターの場合はさまざまな対策が講じられているため、通話内容を第三者に盗み聞きされるようなリスクはほとんどありません。しかし、オペレーターが自宅など外部で勤務する場合にはいくつものリスクが考えられます。
データや通信内容が流出するリスク
パソコンが盗まれるリスク
通話内容を第三者に盗み聞きされるリスク
上記のようなリスクについては、下記の3つの観点からの対策が有効です。
まとめ
ジェイエムエス・ユナイテッド株式会社がおこなった「テレワーク(在宅勤務)の実施状況に関するアンケート」では、業務上の支障や課題を感じてはいるものの、「テレワークを継続していきたい」と考えている企業が73.6%という結果となりました。 このように、実際に在宅コールセンターを導入してみるとメリットやその必要性を実感したというケースも多く、企業が抱える大きな課題を解決するきっかけとなる可能性も秘めています。 人材不足解消、コスト削減、離職防止、BCPなど数多くのメリットのある在宅コールセンターには課題もありますが、専用ツール導入や評価制度・教育制度の再設計など体制を整えれば、導入は決して難しいことではありません。 変化していく働き方に合わせ、本格的に在宅コールセンター導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。
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